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ランボー エッセイ・私訳

IT革命?

「努力は必ず報われる。科学革命だ、さあ、前進!」と今時の「伝道者の書」、つまり「世間みんな」が叫ぶ。
 だがしかし、ワルとグウタラの死骸が、他の奴らの心の上に倒れてくる…。ああ! 急げ、もっと急げ。あそこに、夜の向こうに、永遠の未来のあの報いが…、おれたちには間に合わないのか。
 ――おれはあそこで何ができるんだ。労働か、だが科学技術の進歩には時間がかかりすぎる。祈りは駆け、ひらめきは轟くのに…、そんなことは分かっている。当り前のことだ、おまけにひどく暑い、だれもおれには用がない。おれにはおれの義務があるんだ。おれも自分の義務を放り出して、みんなのようにそいつを自慢してやるんだ。

 これはフランスの詩人、アルチュール・ランボーの「地獄での一季節(1873)」の「閃光」という詩の一部です(翻訳:門司邦雄)。某国首相の「IT革命」宣言を見て、このくだりを思い出してしまいました。
 1851年の第一回万国博覧会、ロンドン、ハイドパークのガラスと鉄の水晶宮が当時の国際社会に与えたインパクトは、今のインターネットを凌ぐものだったかも知れません。万博ツアーが企画され、多くの労働者もロンドンに万博見物に行きました。フランスのエッフェル塔の建設が1889年ですから、文化面では世界の中心と自負していたフランス、パリも産業革命では立ち遅れていました。
 「IT革命は産業革命と異なりデフレ的要因を含んでいる」などの言葉を見ることがありますが…。この詩の書かれた1873年は世界不況の始まった年でもあり、その後、20年近くで(たぶんロンドンの)物価が40パーセント下落したそうです。

2000年10月2日
門司 邦雄

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