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マラルメ

Brise marine

海の風

 マラルメの詩の中でも、広く知られている詩です。C.ジャンコラは、「現代高踏派詩集(パルナス・コンタンポラン)」に掲載されたマラルメの「花々」とともに、この「海の風」もランボーが読んだのではないかと推測しています。三さんのヤフー「マラルメ」トピで読みました。


       海の風
          ステファン・マラルメ

肉体は悲しい、ああ! そして、私はすべての本を読み終えた。
逃げよう! 彼方へ! 鳥たちが未知の海と空の間にあって
酔っているのを感じる!
何物も、目に映る古い庭も
海に浸ったこの心を引き止めはしない
おお、夜よ! 白く守られた空しい紙の上の
私のランプの寂しい光も
子供に乳を飲ませている若い妻も。
船出しよう! マストを揺らす気船よ、
錨を上げよ、異国の自然に向けて!

残酷な希望にかき乱された「倦怠」は、
未だにハンカチーフの最後の別れを信じている!
そして、おそらく、マストは、嵐を招こう、
マストも無い、豊かな島も無い、行方も知れぬ、
難破船に吹き降ろすだろうあの風を…
だが、おお、我が心よ、船乗りたちの歌を聞け!

翻訳:2004, Parolemerde2001


 タイトル「海の微風(そよ風)」で知られている詩ですが、Brise de mer ではなく、Brise marine となっています。このそよ風は、やがて嵐になるようですし、Brise はロベールで調べると Vent peu violent 、つまり、強くはない風と出ていますので、「海の風」としました。ボードレールから、倦怠(あるいは、憂鬱)、航海への誘いを受け継ぎながら、マラルメなりの虚無への旅立ちを詠っている詩だと思います。19世紀のヨーロッパは船の時代でした。マラルメは舟遊びを愛したそうです。船は(航海は)、文学だけのテーマではなく、広く時代の熱望だったようです。ベンヤミンの「パサージュ論」には、次のような引用があります。
「「僕のすてきな舟」という歌が大流行した。……それは一連の水夫もののシャンソンのはしりであって、こうしたシャンソンはすべてのパリジャンを海の男に変えてしまったように見え、彼らに舟遊びを思いつかせることになった。……賛沢が輝く豊かなヴェニスでは/金色の柱廊が水面にきらきらと映え/大宮殿の大理石の上には/芸術の傑作やすばらしい宝物が飾られている/僕にはゴンドラしかない/鳥のように生きよ/鳥は左や右に揺れながら翔ぶ/ほとんど水面をかすめながら」LH・グルドン・ド・ジュヌイヤック『一八三〇年から一八七〇年までのはやりうた』パリ、一八七九年、二一-二二ページ(パサージュ論 第3巻/ヴァルター・ベンヤミン著/今村仁司・三島憲一ほか訳/岩波現代文庫)

パサージュ論 第3巻 (岩波現代文庫)

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