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マラルメ

Sonnet en-yx

( yx のソネ)

 この詩は、かつてマラルメトピで、トピ主の三さんが抜けた後、ぼくがひとりで最後に読んだ詩です。おそらくは詩人が死んだ後の「無」の世界を描いた詩ではないかと思っています。ぼく自身が老年となり、また身近な人もだんだん他界して行き、この詩を思い出すことが多くなりました。
(2015年3月10日 Parolemerde2001)


       ( yx のソネ)
          ステファン・マラルメ

汚れ無き爪が高く、オニックス(縞瑪瑙)を掲げ、(注1)
真夜中に、松明を掲げる者、「苦悩」が支える、(注2)
多くの夕べの夢は、フェニックス(不死鳥)に燃やされ (注3)
誰もいないサロンの小テーブルの上の (注4)

骨壷には収められない:プティクス(貝殻)のない、(訳注5)
虚ろに響く、打ち捨てられた飾り、
(なぜなら「主人」は涙を汲みに、ステュクス(地獄の河)に行った (訳注6)
「虚無」が誇りとする唯一の物を持って)

だが、北に開いた十字窓の近く、ニックス(水の精)に向かい、
一角獣たちの装飾が火を蹴上げるに連れて、
黄金の輝きが、おそらくは死んでゆき、(訳注7)

鏡の中では裸で、ニックス(水の精)が亡くなっている、
額縁で閉じ込められた忘却の中には、すぐさま、
星の七重奏の煌きが留められたにもかかわらず。(訳注8)

翻訳:2003, Parolemerde2001


訳注1) オニックス 縞瑪瑙の意味の他、ギリシア語で爪 ongle を意味する。
訳注2) 夢がランプの比喩のように、苦悩は門 porte の比喩
訳注3) フェニックス(不死鳥)は、太陽の意味で、不死鳥神話のように毎朝蘇る。
訳注4) 壷 amphore は灰(死灰・骨灰)を集める。
訳注5) プティクス(貝殻)は、容器の意味ではないだろう。最初のヴァージョンでは「船 Vaisseau 」となっている。1868年にマラルメはルフェーブルに、ix の韻の詩を作る為に、 ptyx の意味を問い合わせいてる。プティクスは、ギリシア語で、貝殻 coquillage ・折り目 pli の意味。「詩の折り目」という注もあったが、意味は分からない。
訳注6) 「主人」は詩人のこと。ステュクスは、ギリシア・ローマ神話の地獄の大河。Wikipediaによると、地下の冥界を七重に取り巻いて流れ、生者の領域と死者の領域とを峻別しているという。ステュクスの水には神々さえも支配する特別な力が宿っており、猛毒であるという説や、逆に不死をもたらす神水であるという説が唱えられている。
訳注7) 何か金色の物-黄金の輝き-は、おそらく金色の額縁で、火と水、一角獣とドイツ神話の水の精ニックスがそこに対峙している。
訳注8) 星の七重奏の煌きは、大熊座のことである。日本では、北斗七星です。


詩人のいない詩人の部屋

 この詩は、鏡のある部屋(小サロン)での出来事を書いてあるようです。
夕日が、おそらくひとつの窓、西または南西向きの窓、から差し込んでいます。この部屋の主人は外出中のようです。
北向きにも窓があります。これは十字窓です。その側に額があります。額は金色で一角獣たちが浮き彫りにされています。額の中は、絵なのでしょうか、鏡と取る方が自然に思います。鏡には、水の精ニックスが映し出されています。これは、他の絵、例えば裸体画のことでしょうか、ニックスの絵でしょうか、あるいは、ひょっとして、小サロンにいる女性なのでしょうか。閨房の女性が裸体でベッドに横たわっている、あるいは人魚のように上体を起こしていると考えることもできます。
夕日が落ち、金の輝きが額から消える、鏡の中の裸体も暗闇に溶けてゆきます。そして、北の窓には、北斗七星が輝きます。鏡には窓の星が映ります。そして部屋は闇になります。

翻訳:2009年4月29日、訳注:2009年5月5日、掲載:2015年4月7日、Parolemerde2001

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