資 料
2001年8月27日のN新聞の社説に、今の世界経済の状態は19世紀後半から20世紀初めに類似しているという記事がありました。どこかで読んだことがあると思い、調べてみたところ、1999年にピーター・タスカ(投資ストラテジスト)が「日本の大チャンス」(講談社)の中で、現在の世界構造は19世紀後半に類似しているという内容のことを書いているのを見つけました。今では記憶も不確かになり、この二つの記事の関連性は分かりません。タスカの指摘による現代との大きな違いは、当時は金本位制だったということでしたが…。
産業革命が起き、鉄道が普及しても、新しい社会に変わるにはそれなりの時間がかかりました。「おまけに科学はのろい。祈りは駆け、光明は轟くのに…」と、ランボーは「閃光」/『地獄での一季節』の中に書いています。フランスで鉄道が普及したのは19世紀の中ごろです。映画「太陽と月に背いて(原題 Total Eclips )」には、S.N.C.F.(フランス国鉄)の協賛で(ちょっときれい過ぎる)鉄道のシーンがたくさん出てきます。
余談ですが、車については、1885年にダイムラーがガソリンエンジン搭載の木製モーターサイクルを製造しています。時速12キロだったそうです。19世紀の発明で20世紀の発明(N新聞の社説)ではありません。
ランボーは『地獄での一季節』の最後の詩「永別」の中で「おれたちのバルク船は、泥と炎で汚された天空の巨大な都市、悲惨の港に向けて、舳先を回す。」と書きます。そして「徹底的に現代的」であることを自らに課した彼は、「夜が明けたら、燃える忍耐で身を守り、輝く大都会に侵入」します。この「大都会」と「都市」はおそらく同じ都市、当時の世界、つまりヨーロッパの文化の中心であったパリではなく、経済の中心であったロンドンのことでしょう。「水晶の大通りが、ワインレッドの空に洗われたバラ色とオレンジ色の砂の上に高まり交差する」町であり、「ぞっとする群れをなしていく筋にも拡がるスモッグの層」と「アスファルトの砂漠」の町でもあります。(「首都の」/『イリュミナスィオン』)
ランボーはパリを捨て、パリから追い出されと言った方が良いかも知れませんが、ロンドンに行き、やがてアフリカに行きます。アフリカで新しい土地を探検したり、事業を起こそうとさまざまな実用書をママンに依頼しています。「おれは新たなる地を発見した。新しい事業を起こそうとも努めた。」のでしょう。
1873年に始まる世界不況(デフレ)の主な原因は、産業革命がある程度行き渡ったことと、新大陸などからの安い農産物の流入とされています。現代のデフレの主な原因は、IT革命がある程度行き渡ったことと、ベルリンの壁の崩壊で始まった社会主義諸国の安い労働力の世界への参入、特に中国の工業化による安い工業製品(と農業製品)が先進国に輸出されていることとされています。
19世紀フランスで、エッフェル塔と同時期に建てられたパリのサクレ・クール教会は、同時に建設労働者の雇用対策でもあったということを読んだことがあります。1900年のパリ万国博覧会は電力を動力とし、動く歩道もあり、おびただしいイリュミナスィオンでパリの夜に燦然と輝いたそうです。このころ、ヨーロッパでは長い不況(デフレ)が終わりました。
「新しい労働の誕生を、新しい英知を、圧政者と悪魔の退散を、迷信の終焉を迎えに、―最初の人々として!―この世の「生誕の日」を拝みに、砂浜と山々を越えて、おれたちが行くのはいつなのか!
天の歌、民の歩み! 奴隷たちよ、この世を呪うまい。」(「朝」/『地獄での一季節』)
主要参考文献:
西川正雄・南塚信吾著『帝国主義の時代』/ビジュアル版世界の歴史/講談社
ピーター・タスカ著『日本の大チャンス』/講談社
20年前にこの文章を書きました。その10年ほど前、仕事でパソコン通信をやっていました。当時は、NEC9801のワープロソフトと言えば、一太郎が主流でしたが、キー操作が多いので気に入らず松を使っていました。後は、仕事で使う表計算ソフトでしたが名前を忘れてしまいました。その後、リコーのワープロ、表計算ソフト、そして5年前にWindows95を購入しました。2000年からランボーの掲載を開始しました。
今から25年ほど前でしょうか、INS回線ができて、物流が大きく変わると言われたものでした。また、AI辞書なども使われるようになりました。
そして2020年頃から、ネットの制作がより早くより自由になってきました。みんなが同じパターンを使わなくても良いのに……。
さて、これからどうしようか?
地球の気候変動は、何が主要な原因か?
なぜ、富の不公平が酷くなるのか?
なぜ、ウィルスや新しい病気が流行るのか?
なぜ、みんな同じような服や料理や音楽や映画やゲームに、憧れるのか?
放射能汚染は、いつになってもなくならないのか?
どこで、人を信じる・信じないを判断するのか?
天皇は必要あるのか?
…………???
門司 邦雄
2001年8月28日、2021年1月28日
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