イリュミナスィオン

Pax Americana のディスプレイ
Art display of "Pax Americana" at Sendagaya, Tokyo 2006 - Photo : Kunio Monji

Illuminations

Démocratie
民主主義

 "旗は汚らわしい風景へと進み、おれたちの方言が太鼓の音をかき消す。
 "中心地で、おれたちは最高にハレンチな売春を育てよう。筋の通った反乱は皆殺しだ。
 "コショウをまぶした水浸しの国々へ!―工業か軍事の極悪非道の開発に従事に。
 "ここはさらばだ、どこでも良いのだ。志願した新兵のおれたちは凶暴な哲学を身に付けよう;科学には無知で、慰安にはしたたかだ;この世はくたばれ。これが本当の前進だ。道を、進め!"

フランス語テキスト

翻訳:門司 邦雄
掲載:2001年10月12日


帝国主義


 この詩は1886年に「ラ・ヴォーグ」に掲載された詩で、ランボー自身の原稿は失われています。民主主義の名を利用した、大英帝国やフランス共和国など、19世紀における欧米列強の植民地への帝国主義的侵略の内実を皮肉に描いた詩です。太鼓からはアフリカが、コショウからはインドが、思い浮かびますが、後に書かれるように、どこでも良いのでしょう。代表的な侵攻先を示したものでしょう。なお、A. アダンは1876年にランボーが志願兵としてジャワに行ったときの作品としています。

 ひねった言葉使いがところどころに見られます。「志願した新兵」は「 conscrits du bon vouloir 」で、直訳すれば「熱意の新兵」となり、一般に使われる「志願兵 volontaires 」ではありません。当時の大英帝国陸軍は、徴兵ではなく志願兵でしたので、ランボーはそのことを書き込んだと思われます。最後の「道を、進め!」は「 En avant, route! 」で、「前えー、進め! En avant, marche! 」のもじりです。すぐ前に「前進 marche 」が使われているので、言葉を替えたと考えることもできますが、むしろランボーなりの皮肉のように思われます。

解読:門司 邦雄
掲載:2001年10月12日、2008年11月17日

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