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ランボー イリュミナスィオン

Scènes

並び舞台

 古くさい「喜劇」は、それぞれの舞台の調べを追って、「恋の牧歌」を分ける:
 芝居小屋の立ち並ぶいくつかの大通り。
 葉の落ちた木々の下を野蛮な連中がうろつき回っている石ころだらけの畑の、端から端まで延びた木でできた長い歩道橋。
 黒い紗で覆われた回廊の中を、ランタンと木の葉を持った遊歩者の足音が続いている。
 観客たちの小舟で囲まれた群島にかかる石組みの浮き桟橋に、聖史劇の鳥たちが襲いかかる。
 現代風クラブの客間とか古の東洋のホールのあたり、天井下に設けられた小サロンの中で、フルートと太鼓が伴奏する叙情的な歌の場面がお辞儀をしている。
 雑木林に囲まれた階段桟敷の頂上では夢幻劇が演じられる、 ― あるいは、耕作地の尾根の上でうごめく樹林の影の中、ボイオティア人のように野卑な連中のために騒ぎ立ち、転調する。
 照明された回廊の十も立てられた仕切りの交差する稜線の舞台の上で、喜歌劇が分かれる。

フランス語テキスト

翻訳:2015年3月1日、翻訳掲載:2015年4月7日、Parolemerde2001


アーケード街のシーン

 原題の Scènes は、場面とか舞台の意味の複数です。
 ランボーはヴェルレーヌと連れ立って1872年にロンドンに行きます。この詩もロンドンで体験したある「シーン」を詩にしたものだと思われます。巨大なパサージュ、分かりやすく言えば大きなアーケード街を、芝居小屋の並ぶ大通りに見立てたもので、通りの交差するところもあったように見えます。さらにこの詩も、おそらく夕方から夜にかけての情景で、『イリュミナスィオン』の詩の技法的にも、ライティングの変化と視点の変化をその動機にしている作品のひとつと思われます。
 さて、ウィキペディアにハリーポッターにも出てくる有名なロンドンの「レドンホールマーケット」の写真があったので、リンクしておきます。この写真をよく見ると左側のドームの上にAD1881の文字が見えます。それ以前、ランボーがロンドンにいた頃はどうだったのでしょう。調べてみましたが分かりませんでした。ランボーの詩からは、この写真よりもっと粗野なシーンが見えてきます。あるいは、立て直される前で老朽化していたのでしょうか。あるいは、もっと他のアーケード街かもしれませんが、発展するロンドンの郊外のアーケードなのでしょうか。
 同じ『イリュミナスィオン』の「大都会(2)」には、もっと突き放した印象で描かれたドームのアーケードが見られます。
「商店街は単一形式の円形広場で、アーケードがある。商店は見えない。だが、車道の雪は踏みつぶされている。ロンドンの日曜日の朝の散歩者のように数少ないインド帰りの大金持ちが、ダイヤモンドの乗合馬車に向かう。赤いビロード張りのソファーがいくつか、8百ルピーから8千ルピーまでのさまざまな値段の極地の飲物を売っている。この円形広場に劇場を探そうと考えたが、店には充分に陰気なドラマを仕入れているはずだと自答する。」
 こちらは、現代ではこんなシーンかもしれません。
 後半に出てくる固有名詞のボイオティア人は、古代ギリシアのボイオティア地方の人の意味で、アテネの住民が農耕をしていた彼らを馬鹿にしていたので、愚鈍な田舎者という意味が付加されています。喜歌劇と訳したところは原詩では opéra-comique で、台詞を含む歌劇のこと。パリのオペラ・コミック座と関連し、元来は軽い喜劇調の物でしたが、フランス革命以降は伝統的なオペラに近づきました。

解読:2015年3月1日、解読掲載:2015年4月7日

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