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ランボー イリュミナスィオン

Départ

出発

 見飽きた。あの幻はあらゆる空気に見つかった。
 聞き飽きた。町のざわめき、夜も、昼も、いつも。
 知り飽きた。人生の停滞。 ― おお、「ざわめき」と「幻」だ!
 新しい愛情と新しい音の中へ、出発!

フランス語テキスト

翻訳掲載:2001年7月1日、2007年9月26日更新

 


空気

 「出発」は「人生 Ⅲ」と同じ筆跡であり、さらに「出発」のタイトルは、小さ文字であり、追加されたように見えるとガルニエ版の注に書かれています。内容的にも、「人生」と繋がって読めます。
 最初の行の「あらゆる空気に」の「に」は、原詩では「 a 」ですが、ガルニエ版では、「 dans (中に)」、ブリュネル編のポショテク版、ジャンコラ編のテクスチュエル版では、「 sous (下に)」から原稿が書き換えられていると指摘されています。私も「sous (下に)」という読みを取り、始めは「空」と翻訳しました。しかし、手書き原稿写真版を調べてみますと、「 dans (中に)」が書き消されているように見えました。訂正前の「中に」という意味を引いていると考え、「空気」に直しました。周りに雰囲気が分らないことを「空気が読めない」というように、最近の日本語でも使われる社会的な雰囲気としての「空気」の意味を少し拡大解釈すれば、この詩の「空気」にも繋がるように思いました。「あの幻」と定冠詞が付けられた幻は、かって追い求めた「見者」のヴィジョンのことでしょう。しかし、ここではもっと広い意味、非現実的なヴィジョンの意味も含んでいると思います。
 「聞き飽きた」は原文では「持ち飽きた( assez eu )」、となっています。動詞に「持つ avoir 」が使われていて、例えば、「聞く entendre 」などが使われないていないのは、音の関係でしょう。「夜も、昼も」の「昼も」も、au soleil つまり「日向に」になっています。これも「夜」の sior と、s 音をあわせるためだと思います。最後の「音」は bruit であり、音楽的ではない音を意味しています。この詩は、とくに音の効果を重視して書かれています。

解説掲載:2001年7月1日、2007年9月26日更新

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