イリュミナスィオン

Illuminations

Royauté
王権

 ある晴れた朝、たいへんおとなしい人民の国で、立派な男と女が国の広場で叫んでいた。"諸君、私はこの人を王妃にしたい!" "私は王妃になりたい!" 女は笑いながら震えていた。男は人々に啓示とやり終えた試練のことを語っていた。男と女は互いに気を失った。
 実際、家々に深紅の幕が掲げられた午前中ずっと、そして、棕櫚の庭から進んだ午後ずっと、彼らは王と王妃であった。

フランス語テキスト

翻訳:門司 邦雄
掲載:2001年8月5日、2020年10月2日


1日だけの王と王妃


 王権は王であることの権利と義務であり、主権者(王)は都市や国家の平安と豊穣を責務とし、「(日本の場合)三種の神器」や「通過儀礼」により、王権を民衆に認めさせてきました。
 この王と王妃が何を示しているのかさまざまな説がありますが、『イリュミナスィオン』の「人生 II 」で書かれたパリの文学サークルでのランボーとヴェルレーヌのことでしょう。

 この短かい詩の形式は、同じ『イリュミナスィオン』中の「古代美術」「美しくあること」とも類似しています。男は人々に啓示とやり終えた試練のことを語っていたのは、見える者(見者)の啓示と見える者の試練でしょう。それは「おれの優秀な頭脳のために仲間の調子には乗れなかった何回かの結婚式」(「人生 II 」)のシーンのように思えます。結婚式のスナップ写真のような印象です。

 「 En effect 実際」が使われていますが、「実際」以降は幻想の世界を強調しているのではないでしょうか。お伽話の終りは、「王様とお姫様はめでたく結婚し、末永く幸せに暮らしました」となるものですが、彼らのお伽話の王権は丸1日だけだったのでしょう。

解読:門司 邦雄
掲載:2001年8月5日、2003年11月6日、2020年10月2日

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