手 紙

Lettres

À E. Delahaye (octobre 1875)
エルネスト・ドラエー宛、1875年10月

Rêve



夜の兵舎:「夢」.
    兵舎の中では、みんは空腹です―
        本当です...
     発散と爆発だ. 魔人だ:
     "おれはグルエール・チーズだぞ!"
    ルフェーブル:"酒場だ!"
    魔人:"おれはブリー・チーズだぞ!"
    兵士たちは彼らのパンの上で切りました:
        "これが人生さ!"
    魔人―"おれはロックフォール・チーズだぞ!"
        ―おれたちは死んでしまう!...
        ―おれはグルエール・チーズ
          と、ブリー・チーズ... とか.


            ―ワルツ―

    みんなは私たちに加わりました、ルフェーブルと私に, とか.



 魔人と訳しましたが、原詩では Génie となっており、精霊の意味でしょう。この詩では、チーズの精霊です。イリュミナスィオンの詩「魔人 Génie 」とのつながりを持たせるため、同じ訳にしました。

 兵舎は chambrée です。夜の de la nuit がついて如何にもありそうな導入です。gruère ( gruyère ) は、スイス産の硬質チーズです。なぜか y が抜けています。ルフェーブルは、ランボーが住み込みの家庭教師をしたドイツ人です。酒場と訳したのは、兵士に酒を売る「酒保」を意味するドイツ語の Keller です。たいがい半地下か地下に作られていて、チーズが置いてあります。ルフェーブルが「酒保」だと言って、先導します。こんどはフランス産の白カビチーズが現れました。「兵士たちは彼らのパンの上で切りました」は、目的語が略されていて、チーズのことを言ってます。今度はロックフォールチーズです。フランス中央高原南部・ルエルグ地方産の羊乳で作られるブルーチーズです。おれたちと訳したところは、not' となっており、notre (私たちの)省略と取りました。死んでしまうとは、食べられてお終いということです。
 この詩は Génie が食べられて、みんなでワルツを踊って終わりです。

翻訳・解読:門司 邦雄
掲載:2019年12月03日、2020年12月7日

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