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ヴェルレーヌ

C'est ...

(これは…)

「野の風が、息を潜める。」ファヴァール

これは物憂い恍惚で、
これは愛の疲れで、
これはそよ風に抱かれた
林のざわめきで、
これは、灰色の枝に沿った、
小声のコーラスです。

おお、ひそかな若々しいつぶやき!
あれは、さえずり、ささやく、
あれは、揺れる草が息絶えるときの、
甘い叫びに似ている…
君は言うだろうね、うねる流れの底の、
小石のかすかなゆらめきと。

よどんだ嘆き声の中の
もの悲しいこの魂、
それは、ぼくたちの魂ではありませんか?
この生暖かい夕暮れに
ひそかな祈りが立ちのぼる
ぼくの魂と、ねえ、君の魂ではありませんか?



この詩は、ヴェルレーヌの1874年に発行された「言葉のない恋歌(ロマンス・サン・パロール)」の「忘れられたアリエッタ」の I です。この「恋歌(ロマンス)」は、元々はロマンス語で書かれた物語という意味でついた名前の文学の一ジャンルで、フランスで抒情的な歌曲として発達したそうです。また、アリエッタ(イタリア語、この詩ではフランス語のアリエットariette)は Larouse に、可愛らしい短いメロディーでイタリア語のアリエッタに当たるものと解説されています。「言葉のない恋歌」という意味は「歌詞の無い歌」と取られていますが、この詩篇が「言葉にできない恋」をテーマにした詩篇という意味かも知れません。
この詩は、1872年5月に「ラ・ルネサンス」La Renaissance, journal litteraire et artistique に掲載されました。冒頭に引用されている詩は、フランスの劇作家ファヴァール(1710-92)の戯曲の一部です。
最初の3行は C'est つまり「それは…です」「これは…です」という文章で、ランボーの「イリュミナスィオン」の「眠らぬ夜 I」と同じスタイルです。3行目は複数のものを指しているにも係わらず、同じ単数形の C'est が使われています。これは音を合わせるためでしょう。ここに書かれた「君」とはランボーのことだと、私は考えています。

2002年9月30日
門司 邦雄

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