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ヴェルレーヌ

Chevaux de bois

回転木馬

               サン・ジルを通って、
                こっちにおいで、
                 ぼくの身軽な
                  栗毛馬
                  (V.ユゴー)

まわれ、まわれ、楽しい回転木馬、
100回まわれ、1000回まわれ、
たびたびまわれ、いつでもまわれ、
まわれ、まわれ、オーボエに合わせ。

デブの兵隊と、大デブの女中が
またがっている、自分の部屋みたいに、 
だって、この日、カンブルの森では、
ご主人さまはこのふたりだけなんだ。

まわれ、まわれ、心の馬よ、
駆けっこの外で、悪いペテン師が
片目で瞬きしているうちに、
まわれ、勝利のピストンの音で。

こいつは素敵だ、酔っぱらったように、
この幼稚なサーカスに入るのは!
お腹はいい気持ちだけど、頭は痛いよ、
一気に悪酔い、みんなで陶酔。

まわれ、まわれ、
円く駆け足させるには
拍車はいらないよ、
まわれ、まわれ、干草がもらえなくても。

それ、急げ、魂の馬よ、
ほら、もう日が暮れる
お祭から遠く、マダムからも遠く、
オス鳩とメス鳩を一緒にしよう。

まわれ、まわれ! 空はビロードの
星は金の、服を着る。
彼女と彼氏は帰りだす。
陽気な太鼓で、さあまわれ。

       サン・ジルのお祭広場、1872年8月


解説
この詩、「回転木馬 Chevaux de bois 」は、ヴェルレーヌの詩集「言葉のない恋歌(ロマンス・サン・パロール)(1874)」の「ベルギー風景」の「ブリュッセル」に収められています。1872年8月の日付が記されており、ランボーとベルギーに滞在中の作品です。詩集「英知Sagesse」にも、少し改編され、タイトル無し(番号のみ)で掲載されています。
タイトル通り、回転木馬、つまりメリーゴーランドのことを詠った詩です。メリーゴーラウンドは、ヨーロッパで馬上槍投げの訓練のために作られた道具が、遊具としても使われるようになったそうです。1870年にはイギリスで、蒸気を動力として回るだけでなく上下にも動く装置が作られたそうですが、この詩の回転木馬は、詩の内容からは回転するだけの装置のようです。第3節の「片目で瞬きしている…」このペテン師は、眼帯の海賊を連想させます(本当はどうだったのでしょう)。第5節の「オス鳩とメス鳩」と訳したところは、pigeon et colombe で、pigeon は鳩で、colombe も鳩ですが、特に(精霊、平和の象徴となる)白い鳩、あるいはメス鳩を意味します。鳩 pigeon の女性形の pigeonne は、通常、使われないようです。「鳩と白鳩」と訳すこともできます。次の第6節の「彼女と彼氏」と訳したところは、l'amante et l'amant (女性の愛人と男性の愛人)であり、この部分と対応していると考えて、「オス鳩とメス鳩」と訳しました。
サン・ジルはブリュッセルの町外れ、カンブルの森はブリュッセルの南の美しい遊歩道という注がガルニエ版(ロビシェ編)に書かれています。「お祭」と訳した foire は、どちらかといえば縁日のようなものだったのかも知れません。なお、エピグラフのサン・ジルは、ベルギーではなくパリの通りの名称だそうです。
子供っぽくリズミカルな詩で、当時のヴェルレーヌの自由な気分と、そこはかとない寂しさを感じさせます。

2003年5月18日、2003年7月10日
門司 邦雄

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